07 // 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31. // 09

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

[edit]

trackback: -- | comment: --

漆黒の王子 

shikkokunoouji.jpg

カタルシス、という言葉を思いだす。いや、しかしこの本を読んでも、正直カタルシスは得られないと思いますが……むしろ心が重くなるというか。ただ、敬愛してやまない初野さんが、この作品を「書いた」ことで、なんらかの澱から解放され、一皮剥けたのは間違いないのでしょう。この作品先にありきで、後の『1/2の騎士』などに繋がっていったのだと思うと、ものすごく腑に落ちる。


『漆黒の王子』
「砂の城の哀れな王に告ぐ。私の名はガネーシャ。王の側近と騎士達の命を握る者。要求はひとつ。彼ら全員の睡眠を私に差し出すこと。眠ったまま死に至る奇妙な連続殺人事件。ふたつの世界で謎が交錯する超本格ミステリ!第二十二回横溝正史ミステリ大賞受賞第一作」(以上、Amazonより抜粋)

……やはりラストが好きでした。同著『水の時計』でも感じたのですが、初野さんは本当に、最後の一行を書くのが上手い、というか個人的にストライクすぎます。例によって「ハッキリしない」等賛否両論あるようですが、私はもれなく 《王子》 の優しさを垣間見て感極まりました。ファンタジーではない、あの一行はまちがいなく「人間」の思惟。

と、言いつつ、でも物語全体に漂う空気は、これまでに読んできた作品(同著)の中でも、ことさら幻想的な香りを感じました。モチーフ自体は暴力団の抗争なのにね。思うに、光を書くのが上手いのだ。光、というのは、単に眩しさのことを指すのではなく、もっと変幻自在な、言わば「翳り」を書くのが。

どんな暗闇を描写していても、決して100%の闇にしない。夜に目が慣れたとき、ほんのわずかに見える漆色。そういう光を描きだすのが絶妙に上手い。ページをめくるたびに、色はもちろん、匂いや、温度、ひいては湿度を感じる。そう、湿度。しめりけ。空気の重さ、存在感。だからちょっと思ったのは、初野さんには、RPGのシナリオとか書いてみて欲しいなぁ、ということ。

あと特筆すべき(したい)は、本編ではない解説文について。それも初野さんについて言及しているシーンではないのだけれど、「乙一の悲しみの叙情性」、「辻村深月の心理的アプローチ」、さらには「道尾秀介の最悪の最悪性」という形容に、ものすごい共感というか、やられた感を受けた。まさにビンゴというか、それだよ! みたいな。気持ちよく代弁してくれたなぁ、という。

私も精進しないとな……以下は割とどうでもいい自分話。

『漆黒の王子』を読了して、4年前に制作した『トガビト』というゲームを思いだした。今シナリオを見返すと自己投影が鼻についてしかたない上、なにより文章が下手なので読めたものではないのだけど、それでも、うっかり入りこんでしまったら、目を逸らせない「強さ」があった。それは同時に脆さとも直結している、ある種の兆し。

当時あのゲームを企画したとき、この先どんな物語を描くにしても、まずは自分の中の「膿」を抜いておきたい、という意図が明確にあった。その記憶がまざまざと蘇った。ある種のシンパシーを感じたというか……いや、私が勝手に共鳴しただけなのですが。なんにせよ活字の持つ力ってすごいよね……異化というか、想起。追走。

[edit]

trackback: -- | comment: --

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。